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雅鷺合戦物語
第六住吉願書 後見烏悪日発向教訓 城用害事九月三日、真玄が方には軍の評定これあり、明日四日と定めしお、赤口日とて延べにけり、さらば五日にもなさずして、六日にぞ定りける、九月六日はみづのえむま、天一神戌亥にあり、後見の烏いはく、殿は四十一歳木性酉の御年なり、壬午は御為には一生不用日也、又道虚日也、しかも中鴨は乾にあたりて、天一神の方なり、余の悪日は暫おきぬ、天一神の方にむきて、是非弓ひかぬ事也、山城守も四十三とやらむ申さば、土性の酉にて、御同性に参られ候間、彼がためにも悪くは候へども、敵にとりかけられては、悪日かへつて利おうる物なり、其上六日より土用に入ば、土王木囚して、王相御身に当ては以の外わろし、冬の節に入ては、木相土囚にして、相剋相生思ふやう成べし、いかに覚しめすとも、土用の間お御まち候べし、総じて道虚、往亡、帰亡、伐日、六蛇、七鳥、八竜、九虎、十悪日(○○○)、此は万に凶なり、又大禍、滅門、狼藉、没日は四けの悪日、四不出日、五墓、十死、赤口日、此等は事によるべきかなれども、多分は好からざる日也、指神斗賀神日塞、これ又きらふべき方なり、明日の御合戦は、大きに然るべからずと、鳴つ口説ついさむれども、目の前なる敵おさしおいて、吉日悪日とて師せざらんは、近比のくせ事、短慮未練の正体なし、教訓に拘らず、今迄もあればこそ有しに、往亡日といひ、十悪日といひ、天一神の方といひ、取集めたる悪災日日の九月六日に、合戦お定めける事こそ、返々も浅猿けれ、