年中重宝記

五雑

一年六たび庚申おまつり、その夜はねぶらずといふは、人むまれて腹中に三尸虫ありて、身おはなれず人おがいせんとす、此虫庚申の夜、人の罪とがお天につぐ、上尸は人の頭にいて眼おくらくし、面に皺おたゝみ、髪の色おしろくなさしむ、中尸は腸の中の五臓お損じ、悪夢おなし、飲食おこのむ、下尸は足にいて命おうばひ、精おなやます、庚申の日、ねむらずして三尸の名およべば、わざはひおのぞき、福おきたすと老子三尸経に見へたり、夜半ののち、南にむかつて再拝して曰、上尸又彭俗青色、中尸白色、下尸又彭矯赤色、彭侯子、彭常子、命児子、悉入窈冥之中、去離我身、と三反となふべし、されば三たび庚申お守れば三尸伏す、七たび庚申おまもれば三尸滅すといひつたへたり、これによつて七庚申お守るといへり、