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仮名暦略註
きもん 漢字鬼門凡方位の四隅に四門有、乾お天門とし、巽お地門とし、又地戸とす、坤お人門とし、艮お鬼門とす、鬼門とは陰悪の気の聚る所にして、百鬼出入する門戸なり、故に此方お犯す時は、百鬼よく世人お殺害す、故に天帝二神に命じて是お守らしむ、一お神荼といふ、一お鬱塁といふ、二神ともに、百鬼お守りて、猥に人お損じ害する事お成さしめず、然といへども、若人有て此方お犯す時は、二神も守る事能はずして、百鬼の為に損害せらる、慎ずんばあるべからず、按ずるに、丑寅の方は陽神来り、陰気往くの地なり、節気に於ては、除夜の所たり、是即冬陰の殺気退て、春陽の生気来るの日也、故に和俗、此夜は、家毎に陽神の福お迎へ、陰神の毒お追ふもの、其所以宜なるかな、