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燕石雑志

丙午〈十二獣附〉五雑俎に、吹剣録お引て雲、丙午丁未年、中国遇之必有災、然亦有不尽然者、則百六陽九亦如是耳、曲亭子雲、我俗、丁未おいはず、丙午庚申の年お恐るゝこと猶甚し、或はいふ、女子丙午の年に生るゝものは、必その良人お食ふ、或いふ、もし庚申の日に孕むことあれば、その子必盗賊となる、故に凡庚申の日子(ひなみ)ある月に、子お生むものは、その子に名づくるに、金おもてす、この事絶て本説なし、宋より以降、人の命運お談ずるものは、かならず八字お唱ふ、隻その年おのみ忌、その日おのみ忌といふよしお聞かず、年お忌ば月お忌べし、月お忌ば日お忌べし、日お忌ば時お忌べし、子丑寅卯の十二支お禽獣に当たるは、後漢のころより既にいへり、事は下に弁ずべし、丙読為火之兄、丙者、言陽道著明、故曰丙、正字通雲、篆作、亦作、陽火也、従火、光天之下、盛大発揚也雲々、午も亦陽火也、四方に配するときは南方たり、四時に配するときは炎夏たり、月に配するときは五月たり、時に配するときは日中たり、故に丙午の年必火災ありといふ歟、もし俗説に従て、丙午の年火災ありとせば、壬子の年も亦水厄ありとせん、壬読為水之兄、壬之為言任也、言陽気任養于下也、子は陰に属す、四方に配するときは北方たり、四時に配するときは玄冬たり、月に配するときは十一月たり、時に配するときは夜半たり、世俗隻丙午の年に火災ありといふのみ、壬子の年に水厄ありといはざるときは、丙午の説も信ずるに足らず、縦そのよしありといふとも、偶然たるのみ、