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怪異弁断
一凡例
変異妖怪ともに古来専ら吉凶禍福お占候す、如此の変異は如此の吉如此の凶と、各合応お決す、自戦国之時、漢晋の世に至て最も甚し、其書不可勝計、雖然後来に至て其候験無合応者多有之、故に宋朝に至て欧陽修唐書お撰するに、其占候の事応お削つて不記之、〈○中略〉上古の史官災異お記せし者は、人君の徳お修め国家お慎しめんと也、然れども戦国以来陰陽家の等ら数出て、変異ある毎に専ら事応お説て、吉凶禍福お定る事甚多し、是故に怪異一び現ずる時は、則人君密に徳お慎み給ひて、其怪平静ならんと欲すと雲とも、国人怪み惑ひ、且懼れ悪んで、民心動乱するときは、国土の神気も又動乱す、是お以天地は災禍お与ふるに無心と雲とも、人気の唱ふ処に従つて、竟に災禍と成事あり、是皆強て吉凶禍福お定るの弊也、況や日本は、君は神裔也、人は神民也、国家の吉凶専異国の法に憑て不可定之、愚蒙お暁し〓乱の心莫らしむる事あらば、神忠の一端ならん歟、