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怪異弁断
二天異
望気の占候古書に出たる者、不可枚挙、皆吉凶瑞妖の差別有て、取分兵家に専とする処也、右に出す処の周礼十輝の法は、雲気お窺がひ変態お見て、天気お占ひ人事お慎たるならん、末代の望気者は是お本として、種々に子細お附会したる也、変占吉凶は多く言は数々中るの理也、凡占訣の法時に見聞する物お取て、卦お起し吉凶お定む、是お従応の占と雲て、能中る事あり、仮令ば一花一葉の開落お見ても、則取て卦お起し吉凶お弁ず、是其人の為に花葉の開落せしには非ず、時に臨て神機自然に発動する処の物お取て占ふ也、一家一人の占には凡近く少きなる物お取て占ふ、国朝万民、歳の豊凶お占には、凡天変の大なるお以て可占の理也、況や軍戦は国家の大事、万民の存亡なれば、時雲天変の形状お採て、吉凶お占はん事又不可疑、蓋按に雲気は本地中湿熱の気、蒸升して中部の空際に至り、靆て漫々となり、風気に因て或は散じ、或は聚て種々の形状おなし、日光に照されては、映じて種々の色お現ず、大体雲気視る処高遠なるが如しと雲ども、地お去事五十町に不可過、常の浮雲は又甚だ近く、一二町お不過もの多し、霧霞の類も皆地上湿熱薫蒸の気也、雲煙霧霞何れも風気に微動し、或は散乱し、或聚会する時は、種々奇怪の形象に見ゆる事多し、一炷の香煙風絶て無時は、其煙唯一直線お繰出すが如く、微風に因て動揺する時は、会聚散消するの状ち、或は如蛇如魚如浪如木枝、或は如葉如花如輪環如仏像の類ひ、千変万態終に不一、是何の吉凶ぞや、