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新考日食三法

日食三法附言 日食法、支那に正法なし、其これあるは、欧羅巴の暦入てよりして始る、而して欧羅巴之法、亦古粗今密にして、漸お以て精お尽し、暦象考成後編に至て精巧極る、其法、条理貫通して論ずべきものなし、然ども人其布算の繁難に苦しむ、是に於て予〈○高橋至時〉考索して、日食法数条お設け得たり、今其稿お脱するもの白道新法、及び赤道法の二条お繕写して、予に求むる二三子に授く、二法の趣き異なりと雖も、理は一なり、其東西南北の二視差お求むるに、旧法は、黄道高弧交角、及白道高弧交角太陰高弧お求め、〈是暦象考成上下編之法〉或は赤経高弧交角、及白経高弧交角太陽距天頂お求めて〈是暦象考成後編之法〉以て二視差に求め至る、今一切に削り去て、東西南北の原数法数に立て、以て径ちに二視差お得る、旧法に比するに、工力お省くこと数倍なり、簡捷とす、〈○中略〉支那往古の日月食お推すが為に、消長法と倶に簡法お設く、前二法お併せて三法とす、歴史載る所、多く食甚の分、及時刻而已、且つ其数亦未だ必密ならじ、故に易簡お要して、初復の法お略す、二視差お求る法、又旧法お取る、これ食甚一条お求むるに至ては、前の二法お用るも、簡迂甚異ならざるによる、但赤経高弧交角お求る別法お設て之お記す、若夫れ暦史中初復の測数備はるものは、宜しく前法お撰み用ゆべし、 〇按ずるに、日食お候する事は、天部日篇日蝕条に詳なり、宜しく参看すべし、