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新蘆面命
天文密奏の事、去頃公武より仰付られ候により、先生被仰上候は此義は近代と申、中古と申し、いろ〳〵天文の書出候ては、際限もなき細密なる義に候まヽ、不思議に中り候も有之候、又はあたらぬのみにて候、安部晴明など奏聞申され候は、史記前漢の法お用られ候て、晋書已下の天文占は不被申上候、近頃の雑占までお用候様にと思召れ候ては、中々愚臣の及ぶ所にあらず候、隻晴明古法の如く、史漢ばかりにて大綱お申上候様にと被仰付候はヾ、奉畏候旨申上られ候へば、其旨御詮議有之、然らば史漢の法ばかりにて、密奏申上候様にと被仰付候、依之こまかなる事はみな不用也、