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蘭学事始

故の相良侯、当路執政の頃にて、世の中甚だ華美繁花の最中なりしにより、彼舶より、うえーるがらす、〈天気撿器〉てるもめーとる、〈寒暖撿器〉どんどるがらす、〈震雷撿器〉ほくとめーとる、〈水液軽重清濁撿器〉どんくるかーむる、〈暗室写真鏡〉とーふるらんたーれん、〈現妖鏡〉ぞんがらす、〈観日玉〉るーぶる、〈呼遠筒〉といへる類ひ、種々の器物お、年々持越し、其余諸種の時計、千里鏡、ならびに硝子細工物の類、あげて数へがたかりし、〈○下略〉