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両儀集説外記
問、蛮暦も、華暦も、古暦も、今暦も、皆日月五星の行度お考へ測て立たる者に非ずや、華蛮古今共に一天地一日月なり、差ひ精粗何れの処より生ずるや、曰、七曜行度の天暦は、世界古今無差といへども、其考測の製法に依て、人暦不同あり、況や華戎蛮、水土風俗、好悪別なる事有て、暦法律度各有異者也、暦は人事の用に備へんが為なり、四時の気候、万物の気質、各方土に従て有差別、是お以暦各其国に従ふ者也、況や又古今の異有て、造暦粗精の不同あり、古暦は粗にして今暦は精し、中華と雲ども古暦は粗にして、天度歳実皆三百六十五度四分の一お用て、日輪盈縮の差お不立、月行の遅疾お不算、隻平行分お以算之、故に経朔経望の法而已有て、定朔定望お不立、故に多く月朔お誤りて日食お失し、望お誤りて月食お失す、是皆暦術の未だ簡略なりし故也、自夫已来数千歳お経たる故、漸く暦法精密に成て、今暦の度分三百六十五日二十四刻二十五分お用ひ、歳差の法お立て、盈縮遅疾お詳にし、定朔お求め定む、是お以日月の両食誤る事無し、是暦法の大成也、何ぞ古法の簡略に復らんや、況や戎蛮疎略の暦術おや、大明の初め、回回国の暦法中華に入て、大統暦と並び試られしかども、其法不密、故に終に用られずと雲り、回回暦は中華の暦法に近しと雲り、此等無用、況や蛮暦おや、