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好書故事余録

摺本伊豆国加茂郡松崎村に、俊乗院と雲ふ禅刹あり、往歳、寺僧古き屏風お剥て、建久九年戊午の印行古暦お得たり、〈或人雲、此暦、其時年紀歳月と合はずと、追考すべし、〉編次して完全す、守重が知友村上某、伊豆に往て模伝し、予に一冊お送れり、其暦首に、いせごよみと題して、六十州の図あり、上頭に伝暦抄狂歌あり、〈守重が知る所内藤某、嘗て慶長年間、装治せる古屏風お剥して、古暦お得たり、上段に時候の歌あり、古製なるべし、〉其上中下段、大概今暦の体裁の如し、是現存板暦の最古なるものなるべし、