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大和物語

ふかくさのみかど〈○仁明〉と申ける御時、良少将〈○良峯宗貞、即遍昭、〉といふ人いみじき時にてありけり、いと色ごのみになんありける、しのびて時々あひける女、おなじ内に在けり、こよひかならずあはんとちぎりたる夜ありけり、女いたうけさうしてまつに、おともせず、めおさまして、夜やふけぬらんと思ふ程に、とき申(○○○)おとのしければ、きくに、うしみつと申けるおきゝて、おとこのもとに、ふといひやりける、ひとごゝろうしみつ(○○○○)いまはたのまじよ、といひやりたりけるに、おどろきて、夢にみゆやとね(○)ぞすぎにける、とぞつけてやりける、しばしとおもひて、うちやすみけるほどに、ねすぎにたるになんありける、