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天保十五年版本朝年代記
〈当用〉八卦銭占ひ先吉凶お占ふとき、信心して元亨利貞お何べんもとなへながら、ぜに三銭お手に持ち、手のうちにて上下まぜ合せ、そのまゝ一せんづゝたてにならべて、ぜにのうらおもてお見わけ、上の図に合せて下の断りおみるべし、卦ごと末へ願望、待人、失物、方角、病事等の断おしるす、離△(南/目)火中(/赤)女此卦の離は易にはなるとあれば、したしき中か、住所かにはなるゝほどのくらうあるべし、又あきらかといふ心もあれば、万事たゞしくするときは、天のめぐみおうけて仕合よかるべし、何ごともつゝしみてよし、願望かなふべし 待人きたる 失物うせずかくさず 方角にしきた 病事よし坤(西/腹)土(南)母(/黄)此卦の坤は陰の卦なるゆえに、陽にしたがふなり、万事人にしたがひてよし、猶人の世話事くらうあるべし、平生おごるか、目上の人に万事ふそくの心有ば、あしく口ぜつごと有べし、正く慎てよし、 願望さはりありてわろし 待人きたる 失物ひとかくす 方角みなみきた 病事ながびく兌(西/口)金(/舌)少女(/白)此卦の兌は刃の金おつかさどるゆえ、ものごとつるぎおいだくごとく、心づかひ争ひごとくらう有べし、また目高き人にまじはる心あらば、立身する事有べし、つゝしみ万事人に従ひてよかるべし、 願望かなへどもおそし 待人きたらず 失物人とりかくす 方角ひがしきた 病事たいじ乾○(西/首)金(北)父(/白)此卦は乾にして天なり、物ごと正しくすれば、天のめぐみありて、望み事もかなふべし、身もちおごりがましく正しからざれば、天ばつおかうぶる、大きにあしく、万事何事もつゝしみてよし、願望さはりあればおそし 待人おそし 失物かくす 方角にしひがし 病事よし坎(北/耳)水中(/黒)男此卦の坎は北の水お司どり、水下へくだりやすく、上へわたりがたし、其ごとくばんじひかへめにして、すゝむによろしからず、苦労おほし、もつとも心正しくすれば、水のおのれと澄て、天へつうづるごとく望も協べし、 願望なにごともまちてよし 待人きたる 失物うせず尋ねてよし 方角きたにし 病事おそし艮(東/手)土(北)少(/黄)男此卦の艮は、易に万物のおはりはじまるとあれば、ばんじくらう多し、身上その外ものごとあらためてよき心有、男は衣服、女はまゆおおろしてよし、又はえんだん事は弥よし、おやきやうだいのくぜつ、何事もつゝしみてよし、 願望さはりありてとゝのはず 待人きたらず 失物人とり又人にわたす 方角みなみにし 病事だん〳〵よし震(東/足)木長(/青)女此卦の震は雷なりとあれば、万事こゝろたゞしくつとむるときは、何ごともさいわひきたり、世に名おひゞかす心あり、身もち正しからざれば、人おおどろかすほどの災事起るなり、万事つゝしみてよし、 願望何事もかなふべし 待人きたる 失物うせずかくさず 方角きたみなみ 病事おそし巽(東/股)木(南)長(/青)女此卦の巽は易に順なりとあれば、総じて目上の人にしたがひ、下おいたはり、親るい、むつまじくすれば、天のめぐみふかく、何事もよきなり、つゝしまざれば天利にたがひ、思ひよらず、わざはひあるべし、 願望すこしはかなふべし 待人おそし 失物うせずかくさず 方角にしきた病事すこしづゝよし