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総見記

新公方〈○足利義昭〉濃州御動座事公方は、信長の御請奔走の次第、不斜御悦喜に思しめされ、早々濃州御動座有るべけれども、猶戦国の時節、人の心いぶかしければ、安否大切の義と被思召、御思案決定の為に、清信に被仰付、一柏老人の門弟大華(○○)と雲易者おめして、卜筮お執らしめ、吉凶お御覧有けるに、臨の節に行に当て、五効の兆お得たりける、大華勘文お引て申上けるは、六五は知て臨大君の宜也、吉也、象に曰、大君の宜は行中也と雲々、卜筮吉兆お得たまふ上は、御利運疑有べからず、但し御身に大君の知あらず、中行の徳なくんば、其応ありがたかるべしとぞ申し上ける、新公方、御大慶にて、弥御思案お定められぬ、