[p.0508][p.0509][p.0510]
二占要略

吉凶占法大略凡太乙の占法は、其国に止り守る者お主とし、外国より来る者お客とす、仮令ば客南方に在ば、之に向て南蛮お攻るに利あり、或主北方にあつて、敵も北方なる時は、主に向て国お守り、戦に利あるが如し、唯其変易挙て尽し難きのみ、仮令は兵お原野に陳ねて、旗鼓相望む時は、先に動くお客とし、後に応ずるお主とす、又安居の時は、先に起は主、後に応ずるは客となるが如く、主客先後一概に論ずべからず、之に関囚迫掩擊の占あり、主客大小将関なく、文昌囚迫なく、始擊掩擊なきは将発とす、吉なり、若大小将関文昌囚迫に遇ひ、始擊掩擊に遇は将不発とす、凶なり、主大将不発、客大将発は客たるに利あり、之に反するは主たるに利あり、若主客大将不発は、同く参将の発不発お見て、主客の利お考ふべし、扠関とは主客の算数と、太乙及天目、或は大小将と宮お同ふして、勢ひ両立せず、互に相関防するの義なり、これ主客大小将共算長く、〈多きおいふ〉及和する者は勝、算短く、〈少きおいふ、十余に不及ものは単といふなり、〉不和ものは敗なり、又算等きも凶なり、掩とは始擊と太乙、および主の大小将と宮お同し、〈算和不和有祥災〉陰盛にして陽蝕せらるゝの義なり、囚とは太乙と文昌主客大小将と同、宮相侵お雲、拘繫執止の義にして、喪亡奔敗の禍ひあり、迫とは太乙の左右の宮辰、文昌、主客、大小将に遇おいふ、侵逼脅持の義にして、即上下相凌ぎ、左右迫り挟むの象なり、前は外迫といふ、藩臣外国の類とす、後は内迫といふ、后妃宗族の類とす、宮に在れば急とし、辰に在れば緩とす、また始擊の迫お擊と雲なり、又太歳太乙の後に在るは、陽年は災浅く、陰年は災深し、前に在るは之に反するなり、又主客大小将相挟るゝも凶なり、又二目大小将太乙と相対するお格といふ、凶なり、又太乙一八三四の宮に在は主お助くとし、九二六七の宮に在は客お助とす、又主客の算一八お得るは、水に属して曲陣皂旗に利あり、三お得るは、木に属して直陣青旗に利あり、四九お得るは、火に属して鋭陣赤旗に利あり、二五お得るは、土に属て円陣黄旗に利あり、六七お得るは金に属して方陣白旗に利有、雲気は主客とも算お得る方より来るお順とし、吉とす、賊お聞ときは、客は始擊の方、主は文昌の方に備ふべし、奇兵亦此方お用ゆ、伏兵は太乙処在の時〈按に方といふに同じ〉お用るなり、又算和不和と雲は、太乙八三四九の陽宮に在て、一三五七九の奇数お得るは重陽不和なり、太乙一二六七の陰宮に在て、算二四六八十の耦数お得るは重陰不和なり、太乙陽宮に在て耦お得、陰宮に在て奇お得るは陰陽和なり、又三九の宮お純陽とし、四八の宮お雑陽とし、二六の宮お純陰とし、一七の宮お雑陰とす、太乙天目陰宮に在といへども、算して純陽お得、陽宮に在といへとも算して純陰お得る者吉ならずとす、又算して十四、十八、二十三お得るお上和とす、大吉なり、又三十二、〈武備志二十三に作るは誤りなり〉三十六、二十九お得るお次和とす、又十二、十六、二十七、三十四、三十八お得るお下和とす、〈按に此上中下三和は、一十三十の奇数の余算は耦数お取、二十は耦数故、余算奇数お取て、陰陽和の算とするなり、〉又算お得て十に満ざるお〈一より九までおいふ〉無天とし、五将不発算不和なれば天変とす、又算お得て十の余算五に満ざるお〈十一、十二、十三、十四、二十一、二十二、二十三、二十四の類、〉無地とし、不発不和なれば地妖とす、又算お得て十に満るお〈十、二十、三十、四十の類、〉無人とし、不発不和なれば人禍とす、又算お得て十の余算五以上なるお〈十六、十七、十八、十九、二十六、二十七、二十八、二十九、卅六、卅七、卅八、卅九の類、〉三才倶足の算とす、凡如此の類挙て尽すべからず、因て大略お載す、詳に武備志に見えたり、見て知るべし、殊に兵占の如きは、時計便覧の図と雲て、陽遁陰遁七十二局の図お出し、各吉凶お委く載たり、故に心お用ひずして一見よく知らるゝなり、扠此時計便覧の図は、五子元〈甲子、丙子、戊子、庚子、壬子の元、各々七十二局づゝ、〉合して三百六十局なれども、各元皆同例なるが故に、五元お一図に合して、隻七十二局お図して、図上に五元の干支何れに合といふ事お知らしめんために、其五干支お載て、三百六十より下の余算お挙たり、因て其図お求るには、若干の時数お三百六十の数〈六紀甲子五子元一周〉にて除き、数に満ざるは甲子元七十二局お除き、尚余算多き時は、丙子戊子庚子壬子の各元お次第に七十二局づゝ除て、七十二数に不満余算お見て、元に入事お知るに、一算ならば第一局、二算は二局、三算は三局と、是又次第に七十二局までの図に引合す時は、別に煩しく数法お説にも及ばず、太乙行宮お初め、主客大小将の処在、并各々吉凶まで詳に知るゝ様にしるせり、但冬至後は陽遁の図、夏至後は陰遁の図に引合せて見るべし、又歳日月の三計も、此図〈三計には陰遁なし、陽遁のみなり、〉に因て求る時は難き事なし、唯吉凶の考兵占のみお挙たれば、三計に於ては用なき事多し、〈仮令ば日計庶人の占に、主は土お守る官、家人客は使臣商旅と見やう異るが如し、〉且吉凶方角等は誤り記したる事少しとせず、心得て見るべし、