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二占要略

吉凶占法四課の法にて日と辰と処お二つにす、三伝お并て五処、年命お加て六処、但年命は二処にかゝる故七処となる、各類神お見て生克旺相おとりて占お決断すべし、又行年お略して不用、唯天上の時〈天盤の占時の支〉正時〈地盤の占時の支〉大歳月建来人の方等お取て占ふ類、種々の説あり、占法判断の例二三お挙て之お示す、仮令ば敵国より使来るに、未其善悪虚実お審にせざる時占之て、辰上の神日の上の神お制する時、其言信ずべし、是客畏主なり、之に反して日上の神、辰上の神お克する時は姦心お主る、其言信ずべからず、又日上の神将朱雀天空お見れば来情変あり、其言虚詐なり、信ずべからず、 賊兵至ると聞時、玄武白虎臨む所の神、日お克すれば賊強なり、宜く急に備ふべし、若我彼に臨めば必ず利お得るなり、主将の行年本命若白虎臨処の神お克すれば師有功、之に反すれば敗あり、又年命の支勾陳のぞむ処の神お克するも吉なり、 覓水求粮の占には、月将お正時にかへて、天盤の未の加ふる処三百歩にして井泉あり、卯の加ふる処三百歩にして水道あり、丑の加ふる処三百歩にして粮草あり、河お渉り水お渡る占に、天盤の辰未卯子、地盤の辰未卯子に加ふる時は、天河覆井と名付て、河お渡る、二沈溺お主る、又天罡加ふる処水道とす、罡孟に在れば前行凶、仲に在れば中行凶、季に在れば後行凶なり、又日干お陸路とす、日支お水路とす、故に支克お受ざれば宜く水路に行べし吉なり、山路に迷ふ時は天罡孟に加れば左行、仲は直行、季は右行、各五十歩にして路お求むべし、子孫父の為めに仇お報ずる時、出門に甲乙日は火命の人南門、巳午の時丙丁の日は土命の人辰戌未の三方といふが如き、仮令ば金命の人金の時申酉は凶なり、又月建の方お見て背之お吉とす、日支お日干の克するは、客たるに利あり、日干お日支の克するは主たるに利あり、来人の善悪お知るには神后落る処孟は良人、仲は商客、季は姦悪細作なりと知る、伏兵或は悪おさぐるには、天盤の子丑卯酉落る処にあり、陽年には大吉お大歳に加へ、陰年には小吉お大歳に加へて、天盤の寅巳未申〈即甲庚丙丁の寄宮〉の方お尋ねて、軍お出せば吉なり、囲お出るには、天罡の下に向ふて出れば吉なり、遊都曾都の占といふ事あり、即武備志に此是先覧真妙の訣千金莫与世人伝と雲て、天盤遊都の上の貴神お其時の貴神とし、其処の地盤の神お天盤に見て、其下の支にて干お求め、扠遊都の対冲お曾都とする、所謂曾都臨処逢白虎とは、天乙若遊都に遇とき、曾都は天空落方に在り、故に順行逆行ともに白虎落る方に臨おいふなり、扠地方〈遊都の本位〉お賊居とし、其上に加る神将お寇とし、曾都お以て賊の遊兵とし、貴神〈貴神の生克は同く臨む処の地の神の生克おとるなり、〉お我将とし、干お我軍とす、此四課〈貴神干賊居寇将〉の上の生克お見るに、我より他お克する時は戦ふべし、他来て我お克する時は攻べからず、貴神干お克する時は軍宜く使ふべし、干貴神お克する時は軍使ふべからず、地方〈賊居〉其上の将〈寇将〉お克する時は、賊寨お守て動かず、将地方お刑すれば、賊移動すると知べし、此余種々吉凶の判断あり、凡この遊都曾都のお精ふする時は、六韜の文お誦ずして賊寇お禽にすと見えたり、〈此遊都といふは甲己の日丑、乙庚の日子、丙申辛の日、寅丁壬の日、己戊癸の日、申お遊都と名つけ、遊都日辰に在れば、賊立処に至るといへり、或は遊都辰に臨めば寇少、日に臨めば賊多しなど、なお種々の占法あり、あぐるにいとまあらず、〉右挙る処は武備志引ところの軍帳賦兵帳句玄等に載する処お抜書して、以て占法の大略おしるすのみ、且占法の事に付ては、種々いはまほしき事もあれども、元是門生のために其大概概お示さんとて、かりそめに著したるなれば、四課三伝の法お略説するまでにて、占法の委曲は武備志に譲りてのせず、勿論三伝お得て後の吉凶判断に至ては、別に口伝にも不及、隻生克旺相お以て考るとき、自ら分明にして何の難事かこれあらん、人宜く三隅お反ふして可なり、