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大鏡
一花山
さてつちみかどよりひんがしざまにおはしますに、晴明がいへのまへおわたらせ給へば、みづからのうへにて、手おおびたヾしくはた〳〵とうつなり、みかどおりさせ給ふと見ゆる、天変ありつるが、すでになりにけりと見ゆるかな、まいりて奏せん、車にさうぞくとらせよといふこえきかせ給ひけんは、さりともあはれにはおぼしめしけんかし、かつ〳〵、しき神一人だいりにまいれと申ければ、めには見えぬものゝ、とおしあけていづ、御うしろおや見まいらせけん、たゞいまこれよりすぎさせおはしますと、いらへけりとかや、〈○下略〉