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源平盛衰記

中宮御産事治承二年十一月十二日寅時より、中宮〈○平得子〉御産の気御座すと哼けり、去月廿七日より、時々其御気御座けれ共、取立たる御事はなかりつるに、今は隙なく取頻らせ給へども、御座ならず、二位殿心苦く思給て、一条堀川戻橋にて、橋より東の爪に車お立させ給て、橋占おぞ問給ふ、〈○中略〉一条戻橋と雲は、昔安部晴明が、天文の淵源お極て十二神将お仕にけるが、其妻職神(○○)の貌に畏ければ、彼十二神お橋の下に呪し置て、用事の時は召仕けり、 ○