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九星図説日要精義大成

日家九星の起例お詳に解記す天の元気は万物の精にして、亦吉凶お発する事最も明なり、抑吉神凶殺と称するもの、其原天地の気質にして、則万物の元気たる陰陽の両儀なり、分つて年月日時の四課に起り、吉凶のよつて生ずる事、固より霊ある所以なれば、動静小事と雖も、能陰陽の理お択し、趣避忽にする事勿れ、凡方位の吉凶に随ひ、祟害幸徳の生ずる期お未前に察知する事は、偏に洛書の九星に倚ものなり、就中日時九星の顕然たるや、恰も明鏡に物の形の映が如く、禍福の起源お探索するの主要なれば、信用せずんば有べからず、猶古来より漢土の諸書に屡起例お載と雖ども、陰陽の差異お立るが故、近世の有職、其順逆の起元においては、審に学得したる輩希なり、予〈○松浦琴鶴〉是お探索する事累年にして、遂に其的適する所の配当お得て、万般の吉凶お考ふるに、禍福掌中に有がごとし、今其真法お著はし、以て世俗に益す、所謂陰陽二遁といふは、凡天に三陰三陽の気あつて、是お客気と称し、地に三陰三陽の有て、これお主気と称す、都て六陰六陽の気、一歳十二け月に応じ、天地に顕遁して移り替ること、暫も止るときなし、已に夏至に至つては、六陽残らず天に顕はれ、六陰はみな地中に遁る、故に夏至お以て陰遁の初とす、反て冬至の節に至れば、六陰残らず天に顕はれ、六陽みな地中に遁る、故に冬至お以て陽遁の初とするなり、都て陰陽は天地の理にして、草木花葉と雖も、冬至夏至に随つて、左へ芽ざし、右へまとひて、自然順逆の差別おなす、況んや星辰の循環に於ておや、故に冬至雨水穀雨三気の九星は、陽遁なるお以て順に行き、夏至処暑霜降三気の九星は、陰遁なるおもつて逆に行なり、而して順逆ともに、上中下の三元に渉り、彼陰陽二遁、すべて六元お一周とし、六六三百六十日にして一歳終るなり、其六元といふは、則冬至甲子お陽遁の上元として、坎の一白星、中宮に起り、雨水甲子お陽遁の中元として、兌の七赤星、中宮に起り、穀雨甲子お陽遁の下元として、巽の四緑星、中宮に起り、夏至甲子お陰遁の上元として、離の九紫星、中宮に起り、処暑甲子お陰遁の中元として、震の三碧星、中宮に起り、霜降甲子お陰遁の下元として、乾の六白星、中宮に起なり、是陰陽二遁の三元、日家九星の起例なり、