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方鑒秘伝集

三元九星之説通徳類情に曰、河洛は天地の秘お洩す、而して義文は画卦に因るお以てし、禹箕は演涛に因るお以てす、其理至て精しく、其用至て博くして区々たり、撰択は特に其中の一端耳と、今方鑒家者流の論各異同ありて、或は紫白吉星お採、又天月二徳お尊み、乃至陰陽貴人お信ずる抔、皆得たる所の術お以て、互に権お張り我お募りて、撰択区々なりと雖も、其原お推ときは、すべて河洛より起る者ゆえ、唯大同にして小異ある耳、然お彼家にて褒善するものお、是家にては貶悪するの類ひ屡ありて、俗是が為に迷惑する者少からず、かく吉凶相反するは、隻其神殺の名称而已に泥み、進退盛衰の理お察(あきら)めずして、猥に善悪お示すが致す所なり、謂つべし、易は六十四卦にして、両筮同卦お得ること希なり、然れども事物一なるときは、判断符節お合すと、入神の徒の考察此のごとし、故に曰、筮に吉凶なし、事に吉凶ありと、易の繋辞伝に見えたり、今此方鑒の術も又他ならず、其習道お異にする耳、止る所は一定なり、依て玄術お得れば、両考更に互迭なきこと理の自然なり、学士つとめて怠ることなかれ、抑方鑒の起例お論ずるに、三元家九星お以て原とす、滋に天月徳及び陰陽貴人等は、乃九星の生旺に乗じて以て其徳益あるの趣、既に五要奇書に述るが如し、又紫白吉星と号るは、遁甲奇門の名称にして、三元家九星に備はれる吉凶の称なし、唯其生剋お以て吉凶お弁ず、三台便覧及び三白宝海等に、五性命の人須く白中の剋殺お忌べしといへる即是なり、蓋すべて吉凶の真理は、偏に生剋お以て原とす、通徳類情に曰、今協紀弁方一書お閲て始て知る、吉凶神殺は悉く五行の生剋製化お本として、之お為ことお、而して援に其本お考ふれば、自から河洛に始まると、所謂河洛は混然転運の気機即体用の二なり、彼の三元家九星は河洛の星名にして、一に始り九に至り、各五行の一気備はりたるは、即生剋必用の原にして、即方鑒の体なり、而して其星年月日時に循還し、禍お為し福お顕すは、即吉凶妙要の理にして、即方鑒の用なり、今九星の体位及び属性お示して、活用妙旨の便とす、夫一白は水星にして、此方お本宮とし、二黒は土星にして、西南お本宮とす、三碧は木星にして、東方お本宮とし、四緑又木星にして、東南お本宮とす、五黄土星にして、中央お本宮とし、六白は金星にして、西北お本宮とす、七赤又金星にして、西方お本宮とし、八白は土星にして、東北お本宮とす、九紫は火星にして、南方お本宮とし、九星各九宮に位お定むる者なり、則左に図お出す、 三元九星定位図 右に設ところの図は、則洛書の図に拠因て、更に九星の名目お施し、以て九局に配当せしものなり、是殊に方鑒備用の根本、三元分別の規矩たるものにして、一切星神の主位弔宮ともに、此局お用いずといふ事なし、蓋又九星の名目たるや、其化用最も広く、彼本命星(○○○)といへるも、即此九星の関所にして、頗る人事の禍福お顕し、時運の吉凶お主どる明星なり、又滋に三元といふは、万物お生ずる自然の数にして、造化窮なきの称たり、易に曰、一二お生、二三お生じ、三万物お生ずと、夫太極已に判れ、清るは升て天となり、濁るはくだりて地となる、天地已に開けて以て人道立、是お三才といふ、彼一二お生じ、二三お生ずといふもの即是なり、凡三の数は元より木気の生数にして、東方震に位す、木は乃仁お主として太歳に配す、太歳は是木星の精にして、仁お専とし、万物お観察すといふ、見つべし、九星中の三碧震に位するも、亦万物お生ずる自然の数なる事お、夫万般の吉凶すべて三元に随つて、種々変化あるものなれば、今清朝に年々頒行はるゝ時憲書にも、年首月首に循環九星の図お載記し、年月とも其配星によつて、三元の差別ある事お記して、方位に過迭なからん事お示す、呼嗚方鑒主要の深事たることお得て知べきなり、 本命星操格之弁時用通書に曰、上元甲子生のごときは、坎局お以て本命官とすと、此本命官といふは、即其年中宮に起りたる星の本宮なり、故に其本宮の星お取て本命星(○○○)とす、抑本命星といふは、彼三元九星、年年交々中宮に巡り入ものにして、是即一歳中の主星たり、能時令お行ひ、其年の豊凶お主どるなり、されば此主星お取て、其年出産人々の本命星とはする事にて、男女の命に別あること更になし、三才運用棟金通書に曰、生成各其性一にして、男女各其極一なりと、彼乾道男お成、坤道女お成と雲るは、剛弱別あるの理とし、唯其物にして、其剛弱備はるおいふ、易に曰、天道立陰陽と雲、又地道立柔剛と雲、又人道立仁義と雲、みな其物にして、其理備はるなり、凡君臣父子の大倫、夫婦朋友の奇偶も必此本命星の管る所にして、吉凶の応験甚だ明なるものと知べし、附軒廊御卜軒廊御卜は、天変地災、神社仏寺の怪異ある毎に、朝廷にて、特に紫宸殿の軒廊に於てとはしむるお雲ふ、こは神祇官、陰陽寮、共に伺候して、官の亀卜と寮の式占とお以て占する例なり、而して内々の事は、蔵人所に於て行はる、