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古今著聞集
七術道
野々宮左府〈○藤原公継〉おさなくおはしける時、母儀〈○上西門院女房備後〉さまおやつして、ぐし奉りて、播磨の相人(○○○○○)とて、めいよの者ありけるに行て、相お見せさせられけり、相人よく〳〵見申て、必一にいたり給べきよしお申けり、母儀あらがひて、是はさ程の位にいたるべき人にあらず、さぶらひ程の者の子にて侍なりとの給ひければ、相人申けるは、まことに侍にておはしまさば、撿非違使などに成給べきにや、いかにも大臣の相おはします物おと申けり、後徳大寺左大臣〈○藤原実定〉の末の子にておはしけるが、このかみ、みなうせ給て、家おつぎて、大将おへて、左右大臣一位にいたりて、天下の権おとり給ける、ゆゝしく相し申たりける也、此事おおとゞ聞たもち給て、相おならひて、目出たくし給ひけるとぞ、わが寿限などおも、かゞみお見て相して、かねてしり給たりけるとぞ、