[p.0585][p.0586]
塵添壒囊抄

四神相応地事地相に四神具足と雲ふは、四神体なにものぞ、北斗の曼荼羅貪狼星お図するには、四方に四神お書けり、朱雀には赤き雀お書きならはせり、其名お思ふには、すヾめ相違なし、但書中に四神お明すには、朱鳥は鳳也と釈せり、雀の字おば鳥の〓名と釈したる事あり、又雀お鳳也と雲へる事もあり、銅雀と書るは、あかヾねの鳳凰也、されば今の朱雀も、実には朱鳳にてあるべきにや、朱雀錦と雲ふにしきも鳳錦也、鳳凰お紋におりつけたる物也、雀お鳳とする事其例一にあらず、朱雀一の名は長離也、離は南なれば南に長じたる神と雲心にて、長離とは雲ふにこそ、前朱雀と雲は、前は南なり、南は火方なれば陽の鳥にあたる、鳳は火の精なる故に、南方の神也、雀は卑劣の小鳥にて火の方の神とするにたらざる歟、雀お図する事は道理覚束無し、後玄武と雲は、後は北方也、又玄冥と雲ふ黒色也、玄武神は亀也、但し亀と蛇と交お玄武とすともいへり、左青竜と雲は、東方の青き色也、又青潤と名く、青色の竜也、右おば白虎とす、西は白色也、一名は索威、索と雲は白也、威と雲は猛虎の威也、四方は四季にかたどれり、四季に各一徳ありて万物お長ず、春の徳は雨也、草木等お生ずる源なり、竜は雨お司どる故也、夏の徳は暑也、あつきによりて万物滋長す、陽長是お司どるべし、秋の徳は風也、風は物お堅する力あり、虎は又風の主也、虎嘯て風起ると雲ふ本文あきらかなり、冬の徳は寒也、寒によりて其地味お増、北方は陰にして寒おいたす、玄武の亀水方に居して、能く陰おつかさどる、〓陰の長也、是お合せて四神の徳とす、