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奥儀抄
中の上
漢武帝は仙の法お習ひて、とけざりし人なり、七月夜漏に、西王母といふ仙人、紫雲にのりて武帝の承花殿にいたる、時に東方朔といふもの、御前にありし時、かくれて屏風のうしろにおる、みかど不死の薬おこふ、王母いまだいたすべからずといひて、桃七枚おとりて、手づから二枚おばくひつ、御門ののたまはく、このもゝかうばしくむまし、うへんとおもふ、王母わらひていはく、これは三千年に一度なるもゝなり、下土にうゝべきものにあらず、この屏風のうしろに侍る童ぞ、三度ぬすみてたべたるものといふ、東方朔も仙人なり、かの仙宮の桃およめり、