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奇魂

医薬名義
さて方士の大宮にて仕し状は、禁秘抄に、侍医常近竜顔者也、召小板敷、於殿上倚子、奉拝天顔、又召便宜所、候簾中、取御脈例也、後冷泉院御時、俊通雅忠類、聴雑袍著紅梅直衣、近代無子細参御縁辺者也、とみえたり、武家にての礼は、永正の比記しゝ、上杉問答と雲書〈諸大名陪臣、遣医陰両道輩書札事と有、〉に、典薬陰陽二寮頭者、五位官也、依之以往者為五位礼乎、雖然近来就被重此道、叙四位或挙上階哉、於大名中、陪臣等之書札者、准神官可知之、抑自武家執政務権之以来、為公家甚被重之、然間雖同官同位、公家武家相対之礼、用捨事異乎と雲り、近世までも位外に重く用ひられて、今如はあらざりき、又方士も今如はあらざりけれど、いつとなく療法も医風も共に変つゝ、終にかくは衰たるにこそ、