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医者談義

至賤中有殊常功談義
昔元和年中、雲上の御歴々、御産の御難産にて澀滞せさせたまひけるに、曲直瀬何がし伏竜肝お進じて、立所に御産平らか成しかば、此賞によりて、曲直瀕お改て、別に家名おたまはりしとなり、雲上の御歴々にてましませば、関東よりは、道三家、玄朔玄鑑父子、半井家、久志本家、其外名ある御医者、〈○中略〉会合の中に、曲直瀬衆医お抽で、父玄朔にも憚ず、伏竜肝と申上けるは、まことに独歩の才、医中の竜とも雲べし、