[p.0785][p.0786]
医道二千年眼目編
十三上
万病一毒
東洞翁曰、万病唯一毒、これ二千年来、古今医人の言はざる所にして数千の医書ありといへども、未だ嘗て載せざる所の言なり、然れどもその旨趣暗にこれあり、たヾ古今医人のこれお了知せざる所なり、これその眼目、邪説の為めに塗り塞がれて、墨々たるお以ての故なり、夫万病の生ずる、これお唯一毒のなす所と雲ふは、東洞翁始めてこれお創むといへども、越人仲景も、亦此意なきにあらず、然れどもこれお古今医人の言に裁断して、これお唯一毒と雲ふものは、天下古今いまだ嘗てこれお聞かざる所なり、我が東洞翁、独仲景没後二千年の下に出で、仲景の方法お執ること、純一にして無難なり、然後これお越人仲景の言と術と徴して万病は唯一毒と雲へり、於是天下の医人のみならず、万人これお疑はざるものなし、これ二千年来、奄々たる天下古今、陰陽家、仙家の医に、惑はされたるお以て、援居の鐘鼓に驚が如し、況やそれこれお分別差別するものあらんや、皆其範囲の中にあればなり、誰れかこれお分弁差別することお得んや、これ今の医流となる所以なり、