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道三切紙抄

七、当他両例、つヽみ紙に、当他之両例とあり、 当流( ○○) と 他流( ○○) との医道の心得のかはりお申わけんため也、当流他流の替りお申さば、無際限事なれども、先第一の替には、他流には用古方也、当流には不然也、所以然方と曰ふことは、漢の張中景が開山也、然れどもそれも傷寒論計にこそあれ、おほく方はなきぞ、其後多くは宋朝に方が出来し、盛に行わると也、当流不用方故は、方も無き其已前も病はありたが、其病は、古方がなきと曰ひて、療治せざらんか也、故に其已前お弁じて、当流は不拘方に也、是がきらりと当他のかはり也、正伝凡集録、借賢成方、蓋為後学設縄墨耳、学者不可固執方法、以售今病、故又以丹渓活套備緑于各条之後、欲使後学熱中之有権耳、此当他両例とあるとも、方のことではなし、此一通は、当流の建立也、他流と曰て、どれお指て、あいてに申すことではなし、他流の人来て、当流に伝へもせず、出処証拠はなき也、然れども聞つたへた分お書載する也、今時世上に申お他流と指也、