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医範提綱
題言
一槐園先生〈○宇田川〉内科撰要お世に公行し、 首めて和蘭の内科お唱ふ( ○○○○○○○○○○○) 、其他和蘭草木略、蘭畝俶載、蘭訳弁髦、西洋医言等の書お編述し、遺稿に属す、榛斎先生、夙に箕裘お継ぎ、大に家風お振ふ、凡そ内景の究理より、内科治法、局方製剤、本草薬品等に至るまで、数十部の書お訳定し、居恒同志と質験し、療法お折衷す、先生毎に門生に語て曰く、疾病は変なり、無病は常なり、遠西の医は先づ内景お明らめ、天廩具有せる形器の官能と、衆液の流動と斉しく妙合するに由て、健全無事にして、性命お保続する所以の常お知り、此より推て、各官能お廃し、流動お誤り、常機お失て、病患お生ずる所以の変お究む、故に常に本き、変お察して、百病の原由お知り、病原明かにして、治法此より出づ、然れば内景は療術の規矩方薬の準縄にして、法お建るも、論お設るも、これより起らずと雲ふことなし、〈○中略〉
文化二年二月既望 門人 諏訪俊謹記