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橘黄年譜

守山侯臣野口兵右衛門、罪お得て幽閉数月、志気鬱々として楽まず、遂に 胸痛( ○○) お発し、背に徹して痛、夜眠る能はず、腹濡弱少腹猶力なく、任脈少しく拘急す、脈沈微、大便難、尾台榕堂大茈胡括蔞薤白白酒湯等お与へ、十棗湯大陥胸丸お以て、之お攻ること数十日、痛益劇し、病者殆んど疲る、余〈○浅田宗伯〉診して曰、病胸痺に属すと雖、其人虚羸攻むべきの証にあらず、且淡飲胸隔に流注す、宜温薬お与ふべし、抧縮二陳湯お与へ、時々滾痰丸お兼用して淡飲温散し、胸痛次第に減じ、志気大に復す、因て家お携て国に帰る、