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橘黄年譜

阿部聡徳院隠居棚倉候年六十余、吐血お患ひ、数日止まず、心中煩悶、夜間発熱安眠お得ず、時に左脇下痛み、微咳食進まず、川村宗憺、戸塚静春院之お療じて自若たり、因て余に診お乞ふ、余先華蕊石末一味お以清水に送下し、次に黄連阿膠湯お与ふ、其夜安眠し、明旦に至りて吐血大に減じ、二三日お過て全く止む、平素左脇下凝結ありて、時々刺痛、左に側臥すれば咳甚し、乃柴胡疎肝湯加山巵子麦門冬お与ふること数旬、脇下の凝結解し、刺痛咳嗽全愈、