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橘黄年譜

八丁渠代地薬舗藤屋覚兵衛次女、年十一、生質虚弱、時々暴熱お発し、搐搦して、昏冒せんとす、余千金竜胆湯お与て熱解す、後咳嗽盗汗出て、羸痩脈虚数、小便赤澀、飲食進まず、乃聖恵人参散お与て漸に愈、主人頗る医お解す、怪て余が治方お用ゆるお問、余答曰、楊氏直指曾氏並雲、十五以下為疳、二十歳以上其病為癆、医学入門雲、疳者乾也、痩瘁少血也、二十歳以下曰疳、二十歳以上曰癆源一也、夫 疳と癆とは同因( ○○○○○○○) にして、其証亦相似たり、故に疳に黄痩青脤、鋸脊穂髪之症あれば、癆に体黄爪青、肚高毛聳の症あり、疳に咬指捻眉之候あれば、癆に揉鼻揩眼の候あり、病疳の児嗜炭吃泥佯笑多諦の変態あれば、患癆の人愛暗憎明、卒怒暴嗔、嗜好常性お変じ、火脳水脚、米糞泔瀉、悉く疳と符喫す、余故に疳の方お以て癆お療し、癆の法お以て疳お治するなりと、主人大に服す、