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牛山方考

一元禄六年六七月の間、大に旱し、金流し石爍る、八月の初より、俄に収斂清粛の令行はれ、暴風霖雨、白露忽霜に変ず、国中の諸人一般の 時疫に感じ( ○○○○○) 、其病状、発熱悪寒、頭痛如裂、 咳嗽し( ○○○) 、身体重く、頭冷て如氷、或は 洩痢お兼ね( ○○○○○) 、或は 瘧の如( ○○○) 、〈啓益〉治之に、黄連香薷飲に蒼朮お加て、百発百中す、一医問て曰、元禄四年の夏、吾子一般の時疫お治するに、胃苓湯に加減して応験如神、今年前方お用るに無効、或は藿香正気散、小柴胡湯、清暑益気湯、白虎湯の加減の方お用て無効、吾子又治此症二四五占お不待して薬効お見る、何等の神方あつて如是なる、授予に吝かなることなくんば、弟子の礼お以拝之、予が曰、前歳一般の時疫は、湿温の症也、 今歳一般の時疫( ○○○○○○○) は、伏暑の症也、六七月天旱極熱す、人皆暑邪に感ず、然に八月俄に清寒の令行れ、霜早く降る、故に新凉の気皮毛お犯して、暑邪出することあたはず、熱寒交々作り、熱鬱して諸病に変ず、是お伏暑の症と雲、香薷にあらずんば除くことあたわず、故に黄連香薷飲に、蒼朮お加て応手有効、君夫退て思之、謹勿膠柱調瑟刻舟求剣、