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梅園日記

杉湯
続詞花集〈雑上〉雲、大斎院 御あしなやませ( ○○○○○○○) 給お、すぎの湯にてゆでさせ給べきよし申ければ、ゆでさせ給へど、しるしも見えざりければ、斎院宰相、
あしびきのやまひもやまず見ゆる哉しるしの杉とたれかいひけん かへし斎院
しるしありとすぎにしかたはきくものおわがこのみわのやまぬなるべし、按ずるに、証類本草に、唐本注雲、杉木材水煮汁、浸埒脚気、また本草図経曰、杉材、医師取其節煮汁、浸埒脚気殊効、唐柳柳州纂救三死方雲、元和十二年二月、得脚気、夜半痞絶、脇有塊、大如石、且死、困塞不知人三日、家人号哭、栄陽鄭洵美、伝杉木湯、服半食頃、大下三次、気通塊散、杉木節一大升、橘葉切一大升、北地無葉、可以皮代之、大腹檳椰七枚、合子砕之、童子小便三大升、共煮取一大升半、分両服、若一服得快利、即停後服、〈按に本事方にも亦柳氏方お載たり〉本草衍義に、杉作屑、煮汁浸洗脚気腫満とあり、また続門葉集〈雑上〉雲、大蔵卿隆博、薬湯のために、杉の葉おこひ侍りける返事にそへ侍りける、法印公紹、
君がとふしる志とも又なりにけり杉のみたてる秋の山本、又按ずるに、薬湯のためにとあれば、これも脚気ゆでん料にや、梶原性全の頓医抄三巻〈脚気部〉雲、凡脚気の人は、家にもちふるところの桶杓ならびに、板じきまでも杉の木お用ふ、又杉の葉杉の木、常に煎じて足おゆで、并に腫たらん処おゆでよ、きはめてしるしあり、済生方にはゆづることお、いましめたれども、ゆでヽ愈たるしるし、おほくみえたりとあり、杉木の桶の事は、続博物志に、脚弱病用杉木為桶濯足といへり、