[p.0827]
安斎随筆
前編六
一 子癇( ○○) 懐妊の婦人、月数重りて、俄に気絶し倒れ、眼お見開き、瞳子おつり上げ、歯おかみ舌お出し、手足お揮ひ動し、そりかへり、人事お知らず、癩癇やみの如くなるお子癇といふ、早く正真の熊胆お濃く水にてときて口中へ入るべし、度々入れ、腹中へ納まれば、病しづまるなり、快くなるまで度々用ふべし、甚妙なり、予其効験お直に見たる故、右の病する婦人の命お救はんと思ふ故、是れお記し置くなり、懐妊の婦人ある家には、かねて正真の熊胆お求め蓄へ置くべし、急には得がたし、母に用ふる事なくても、赤子に用ふる事あり、何も求め置くべきものなり、