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幕朝故事談
公方家
氷川明神は、紀州様の氏神にて、惇廟田安様皆御宮参被遊候、徳廟竜飛後大乗院と雲上方の古寺号お御買せ被成、御建立にて触頭に被仰付、大乗院へ夜盗入候節、自分背お切られ、女房も手お負候お、西元哲と雲外科にかヽり、平愈いたし候処、三年程過、右盗賊牢舎いたし、段々致白状候処、大乗院へ入候事申候に付、大乗院評定所へ引出され、御尋の処、左様の義、一切覚不申候段申之、背おぬかせ候処果してきず有之候に付、盗賊対して御仕置片付、其事御代参の女中へ、大乗院より物語候処、上の御耳に入、瘤おとり候哉、相尋候様にと被仰付候て、とり候様申候に付、御代になり、西元哲一時に被召出、四百俵被下、