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雲萍雑誌

蘇鉄の薬の枯たるお黒焼にして、胡麻の油に和し、たくはへ置べし、金瘡切り疵にはいかほどのことにても、酒にて洗はずに愈ること妙なり、楠正成が家の法なりとて、左海大松屋のあるじ、予に伝へたり、予が友中根弥次郎といふもの、遺恨によりて切られし時、ふかさ四寸ばかりの疵口へ、この薬おつけて忽に全快せり、