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橘黄年譜

北新堀街後藤弘三郎妹於八百、年十六、幼より 聤耳( ○○) の患あり、両耳膿水淋満、時として臭気近づくべからず、左耳之が為聾す、嫁期已に迫るお以、衆医お迎て之お講す、余曰、胎毒のみ、緩攻して其毒お尽すべし、主人其言お諾す、因て葛根湯、加芎黄お与、五味鼹鼠丸お兼用すること数月、膿水漸少に臭去り、左耳近く弁ずるお得たり、無幾して地割役所樽三右衛に適す、