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志都の石室

扠婦人は、十四五歳になると、其の精が漸くに熟成して、経水の通ずることは、一体婦人の血は、本より胎児お養ひ育つるが為に、男子に比しては、自然に多く生ずるでこざる、夫ゆえに孕まぬ時は、其余りの血は経水と成て洩去り、其余の血は子宮に連なり有る処の静脈管からかえり流れて、常に身体おめぐり養ふことでござる、又女の胃は皺が多く、よく食物お消化して滓が少いじやが、凡て女体の男子と違ふ処は、みな児お養ふがための故でござる、さて婦人の療治は、男子よりもむつかしく、又やもめ女のたぐひは、別して仕にくい訣が有て、夫ゆえ医書に、寧医十男子、莫医一婦人、寧医十婦人、莫医一小児とも雲ひ、また療寡婦尼僧異妻妾とも有て、また其婦人より、小児は一段むつかしいことでこざる、