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叢桂亭医事小言

医学〈○中略〉
天地陰陽之道、生育お以大なりとす、故に産婦の治法お知るお専要とすべし、孫思貌千金方に 婦人科( ○○○)お始めに設けたるは此意なり、生育のことは、天地自然の事にて病に非ず、人事の入べきことには非ざれども、難産に至りては病にて、其法お得ざれば死す、皆是養護宜しきお失し、或は多欲にて、胎お偏に成し、或は執作度お失ひ、僕朴躓倒などにて、横産するも有り、鳥獣は交るに時あり、人は交るに無度、犬猫の類已に胎お受れば、再び牡お近かづけず、其上卵生被膜生は、四支の支へなき故に、難産無し、又多欲なれば、産後血熱多く、血暈などし、此血熱日お経て不解、或は風冷などに侵されて、咳嗽お加へ、終に労瘵の状に至るものお蓐労と名け、難治とす、其倒逆生は、自然に受胎の事にて、順産になすの術なし、ねがへりと雲は、虚妄の説なり、是は産前腹侯して、順逆は預めに知らるべきなり、子玄子の腹侯せらるヽお見たるに、百中なり、胎の腹内にある形お明に解すれば、見はづしの無きはづ也、 子玄子一たび出で千古の惑お解( ○○○○○○○○○○○○○○) て、天下始て産乳の理お知ることお得たり、人事の大要、是お学ぶには、産論、并翼の二書あり、手術二十二ありて、回生鉤胞の二術に至りては、筆墨に明にすること不能、故に翼にも此二術お載せざるは、禁秘したるのみに非ず、未熟にて人お誤り、害おなすことお恐る、此二術おしらずんば、起死ことならず、