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春両楼叢書

産家の 禁食( ○○)
産婦は、総て産前より産後お謹むべし、越後にては、産すれば直に塩鱇お与へ食しめて、よく血お治むとて、産後七日の内に、是のみ薬として与ふ、若し与へざれば、必ず血の治る事遅し、越後の婦人、奥州の白河に嫁し来て、一女あり、此女産したる時、本国の土風お以て、遠方来之与ふ、忽に血崩して死す、又白河の隣郡に、棚倉と雲処の婦人、産後七日の内、蕎麦お与ふ、血お治るには妙薬として果して宜しと雲、江戸某の婦人、産後十余日の外、蕎麦お食して、大に腹痛お発す、又松前の人、江戸に来り、産婦お見て、是れは早く青魚お与ふれば、悪血お去りて後患なしと雲教て食しむ、一時に過ずして死す、 又貝原氏も産後に藷蕷お食はする事お忌むと雲( ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○) 、 余試るに( ○○○○) 、果して血お崩して死す、