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貝原養生訓

灸法〈○中略〉 方術の書に、禁灸の日多し、其日、其穴お忌むと雲道理分明ならず、内経に、鍼灸の事お多くいへども、禁鍼禁灸の日おあらはさず、鍼灸聚英に、人神尻神の説、後世術家の言なり、素問難経にいはざる所、何ぞ信ずるに足んやといへり、又曰、諸の禁忌、たゞ四季の忌む所、素問に合ふに似たり、春は左の脇、夏は右の脇、秋は臍、冬は腰是也、聚英に所言かくの如し、まことに禁灸の日多き事信じがたし、今の人隻血忌日と、男子は 除( のぞく) の日、女子は 破( やぶる) の日お忌む、是亦いまだ信ずべからずといへ共、しばらく旧説と時俗にしたがふのみ、凡術者の言遂一に信じがたし、