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曲亭漫筆

鬼貫が伝同道引
鬼貫、姓は、上島氏、俗称は与総右衛門、槿花翁と号す、摂州伊丹の人なり、後大坂に家して、姓お平泉と更む、はじめ俳諧お維舟及宗因に学び、後一家おなす、鬼貫独言、同句選等世に行はる、元文三年八月二日、七十八歳にして没す、伊丹墨染寺に墓あり、浪花客中、或人の話に、鬼貫、中ごろは行れざりしにや、ひところ和州郡山侯の足軽などつとめ、その後大坂にすみて、小児の道引などして、かすかに世おわたりぬ、今なほ大坂に 鬼貫道引( ○○○○) とて、小児の療治に、足より上へも上る按摩の法のこれり、