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古史伝
十八
禁厭法は、〈○註略〉古本に、麻自那比能々理と訓るに従ふべし、〈今本に禁厭おまじなひやむるのりとあり、古言梯に、禁厭にてまじなひと訓り、前漢書高帝紀に、東遊以厭之、注に、禳也とあり、平春海雲、小右記に麻志奈比とあり、〉麻自奈比の麻自は、御門祭祝詞に麻自許利、大祓詞に 蠱物( まじもの) などある麻自と同言にて、那比は、 卜那比( うらなひ) 、 商那比( あきなひ) などの那比と同じ辞なり、〈蠱お麻自と訓べき由は、字鏡に、蠱、万自物と有、是なり、〉さて此三詞の麻自、もと同言には有れど、かく活きて三になれる上にては、軽重と物との差別お成せり、其は、麻自那比は麻自那閉、〈令する詞なり〉麻自那布、麻自那波牟と活きて、軽く聞え、麻自許理は麻自許礼、麻自許流、麻自許良牟と活きて、重く聞ゆるが、麻自物は、吉にまれ、凶にまれ、其麻自に用ふ物お雲なり、