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痘疹致要
秘伝酒湯方( ○○○○○)
夫痘邪は、天地流行の疫毒也、たとひ平日壮実の児と雲とも、其感ずる所の邪毒更に深ければ、沸騰する所の胎毒又劇し、況や初蒸に一度規矩お誤れば、千恨万懐四馬も逐ふ事能ず、死生存亡十日の中に判る、誠に悲傷す可の甚也、医として此お不思は人情にあらず、前説 初蒸( ほとおり) 見点に先じて熱気お解し、薀毒お疎滌して、部位お減ずるの薬方あり、此万全の法則也、然れども若此治療に洩れて危難に懸るの症、九死一生、命期旦夕に迫る、薬力の及所に非ず、此浴法に非ずんば、冥路再び生地に還る事能ず、此蘭語の訳の儘記し置者也、水〈一斗〉 米糠〈二升〉 酒〈二合二勺〉 塩〈廿三匁〉 赤小豆〈三粒〉 鼠屎〈三粒〉右六味合して熱熟湯として十七八歳位の男女此分量お用ゆ、一二歳或四五歳の児は、水四五升或七八升、米糠酒塩も又随て減ず可き也、