[p.0952][p.0953]
医事或問

一或問曰、後世の医に問ふに、 病毒( ○○) 尽くは去らぬものなりといふ、当家にては、ことごとく去といへり、いかん、
答曰、病毒は生れて後、生じたるものゆえ、毒薬にて取去らるヽものなり、其証拠は、大病お療治して、快気の後再びおこらず、又やはらかなる薬にて気お補ひ、体お養ふといふ、医者は、大毒の薬お恐て用ざる故、毒の去る道理なし、然れども彼療治にて、病の治する事あり、是は実に治したるにあらず、自然と毒の静りて、快気したるなり、其証拠には、又重ておこる、それゆえ毒こと〴〵くは去らぬものといふなり、疾医は尽く去る、それゆえ重て発る事なし、