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叢桂亭医事小言

医学〈○中略〉
山脇〈○東洋〉の門人に、永富鳳介と雲人出て、赤馬関独嘯庵と号す、京師の俚言に、人心の儘に任せず、もとれる人お広く指て、毒性と呼ぶ、蓋其唱の同じきお以て、如此は号せりや、此人越前にて、奥村良筑と雲人に従て、吐流お受て上京し、東洋先生に語れば、先生大に嘉し、嫡子東門先生お、遥に越前へ下し、吐方お学ばしむ、良筑教て曰、吾子こそ可吐証候具せりと雲より、徒に上京して、東洋先生に其候お告げ、又越前に下向して、吐薬お試たり、 本邦にて、上古は知らず、 吐流は( ○○○) 、 此良筑翁より創たり( ○○○○○○○○○)、一代の内に一人も薬お乞もの無く、絶たること両度ありと、されども泰然として、吐お以て名医と呼れる事、其人物お思ふべし、