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病家須知

痘瘡のこゝろえおとく〈○中略〉
痘瘡の序熱に、搐搦、上弔、不省人事にいたるものに、撫水術の一法お施には、冷水お手巾に浸て、児の頭上お頻に灌洗、面部おもあらひ、その水、やゝぬるむときには、再冷ものに換て、灌こと八九十遍にいたり、頭面の肌膚冷て、氷のごとくなるに至て止、もし醒覚こと遅ものは、冷水一盞お内服せしめて、治することあり、いづれも見はからひのあること也、〈○中略〉痘瘡序熱、卒厥お発するものに、この術お活用して、其急お救、且起脹灌膿の期に至て、巨利お得ことあるは、予が発明、多年経験の事にして、其必効あるものお認て施行こと、世人もやヽ知るものあれども、かの守杭刻舟之医は、まゝ首肯せざることなれば、俗家は、唯其効あるお信じて用ふべし、