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続視聴草
初集六
蛭飼考証
ちかき世の人、小き瘡おなやめるには、蛭おつけて、その瘡おすひとらすることおするお、西洋の医書より得たるわざといへり、此事は我国、いにしへ人も、 ひるかひ( ○○○○) といひて、せしことなるお、いつしか世に絶て、後には蛭かひといふ詞だに、しる人なくなれるからに、今はじめて、こと国のわざおならひ伝へて、する事とのみ思へり、此わざいにしへぶみに、はやくみえたりとおぼゆれど、たゆき心のおこたりに、しるしもとめざりしかど、おろ〳〵かいつけおけるもあれば、其かぎりおしるすべし、こはもろこしの、隋のころにも、おもひよりてせしことにて、そのかみのくすしのふみにも見ゆと聞つれど、そはのちに考へていふべし、今はまづ、こゝにふるく見えたるところお記すのみなり、菅はらの夏蔭、