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重修本草綱目啓蒙
七山草
沙参( ○○) 〈○中略〉
唐種の沙参は、和産より花大にして色深く、葉も大にして互生す、根は長さ二尺余、韓種の沙参は、葉狭くして厚く光あり、その茎弱く藤蔓の如し、花戸にてつるきヽやうと呼ぶ、薬舗に販く者、舶来に古今数品あり、その一は形肥大にして軽虚、全く和産に異ならず、その一は拳沙参と呼ぶ、皆細く竪に劈きて乾し、巻束して拳の形の如し、又巻沙参と名く、黄白色、その一は全根お中破して両片となす、これおわり沙参、或はかうのもの手の沙参と呼ぶ、以上の三品は古渡にして、今甚だ希なり、その一は竪に細く劈き、巻沙参の如くして巻束せず、これおみだれ沙参と呼ぶ、その一は楊枝手の沙参、或は防風手の沙参と称す、形細長く五七寸許、白色にして防風の如し、此は全根お乾したるなり、此品今多く渡る、先年渡りたるは、根に潤ありて白実なれば、北沙参とも雲べきなり、今渡るものは皆乾脆にして折れやすし、恐は真に非ず、宜しく和の沙参お用べし、即つりがねにんじんの根お乾したるものなり、今薬舗にて誤てせいねいと呼ぶ、薺苨の音訛なり、然ども薺苨は別に一種あり、混ずべからず、蘇容の説に拠れば、沙参に南北の二品あり、北沙参白実為佳、南沙参軽虚為下と雲ふ、本経逢原もこれに因る、然る時はつりがねにんじんは南沙参なり、時珍の説にては、沙参は体軽松味淡而短と言ふ、本草原始にも、独蘆無心黄白内虚者真也と雲ふ、皆南沙参の形状なり、今別に南沙参の舶来なし、多く防風中に混雑し来る、