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本草綱目啓蒙
七山草
甘草( ○○) あまき〈和名抄〉 あまくさ〈同上〉 大和〈和方書〉 かんざう〈通名〉 一名主人〈種杏仙方〉 偸蜜珊瑚〈輟耕録〉 大嗷〈事物異名〉
甘草に同名あり、茶薺甘藤も甘草と名く、
舶来に数種あり、南京お上とし、福州お次とす、新渡の福州は、甚だ大にして緊実ならず、南京は皆細くして潤あり、南京の中こしぼと名けて、外皮縦に小皺紋あり、緊実なるお柬び用ゆべし、凡そ甘草は根の大小に拘らず、外皮薄く肉色深黄なる者佳なり、根大なりと雖ども、皮厚く肉色浅く軽虚なるものは良ならず、その朽て黒色お帯び或は蛀ものは並に用るに堪へず、本経逢原に中心黒者有毒勿用と雲、市人根の最細小なる者おわら手、或はわら甘草と呼ぶ、下品の称なり、形歪斜にして節ある処お柬び出し、挫売おきりこみと雲、櫃中にて折砕たるものお折甘草と雲ふ、朝鮮甘草は味過て甜し良ならず、紅毛甘草は甚大なり、味は美なれども性劣と雲、〈○中略〉
粉草は粉甘草とも書して上品の称なり、本草原始に拠るに、即汾草の誤、汾州に生ずるもの佳なればなり、今粗皮軽虚なるもの薄く切れば、皆砕けて細末となるものお以て、粉草と為は非なり、